Diary 写メ日記の詳細

「ぽよ?」
扉を開けると、そこは体育館。
バスケのユニフォーム着た、
ぱっちりお目目のメンズが一人、
コートに立っている。
(バスケ…?
運動させられるのかな?)
内心そんなことを思っていると、
そのメンズは持っていたボールを
こちらに向けて投げてきた。
「イマちゃん、パス!」
突然のことに、
私はうまく受け止められず
ボールを取りこぼしてしまう。
「わ、ごめんなさ…」
しかし、
男は私がこぼしたボールを瞬時に拾い上げ、
そのままダンクシュートを決める。
「えぇ!?ダンク!?」
「ナイスパス!」
メンズは満面の笑みで言った。
男の子が本気でスポーツしてる姿
キュンとしてしまう…。
「イマちゃんのパスがあったから
今決めれたんだ〜」
「え、いや…
私取れなかったし…」
私が戸惑いながら言うと、
メンズはニヤニヤしながら答える。
「イマちゃんが取れないボールを出したから、
逆に取られたら、私泣きます」
意外な言葉に、困惑する。
すると、
彼は私の顔を覗き込むように
近づいてきた。
「ねぇ、俺の名前知ってる?」
「知らないです…」
「俺の名前は月野結弦!
ちゅきのって呼んでね!
それか、ぽよよ!」
ぽよよ…?
なぜそんなあだ名なのか…?
「分かりました、
よろしくお願いします」
「てか、イマちゃん
…ほんと可愛いね」
いきなり彼は真剣な表情に変わる。
そのあまりのギャップに、心臓が跳ね上がる。
(特別な時間から攻めてくるの…?)
私は、今自分が置かれている状況、
『禁域』について理解し始めていた。
これまでの攻略対象(メンズ)は、
それぞれ一つの突出した能力で
私を惹きつけようとしてきた。
しかし、ここから先は違うのだ。
ぽよよ…ちゅきのさんは、何でもできる。
きっと、この先のメンズもそうだ。
しかも、特別な時間から
攻められることは今までなかったため、
これまでとは全く別物であることを確信した。
「これ…本気モードはどうなるの…」
不安にうなだれる私を、
彼は優しい手つきで撫でた。
「どうしたの?緊張してる?」
色気を含んだ声に、
イマは首を振ることしかできない。
「うぅ…禁域…舐めてた…」
目の前に、
いつもの文字が浮かび上がる
『コウリャクハジメマスカ?』
『YES』『NO』
この段階で、
初めて自信をなくした。
しかし、
ここを越えなければ出られない…
「私…ここから耐えられる気しない。
でも!ここを超えないと出られないんだよね…?」
月野がにこにことしながら、
「無理しなくていいよ」と囁く。
「いや…頑張る。頑張るしかない!」
イマは衝動的に『YES』を選択した。
「ありがとう、俺嬉しいよ。」