Diary 写メ日記の詳細
道枝慎に案内された扉を開ける。
「ボス…どんな人なんだろう」
不安を抱きながら足を踏み入れる。
目の前には派手な部屋が広がっていた。
ネオンが光り、重低音が響くナイトクラブのような雰囲気だ。
そこにいたのは、金髪のチャラ男だった。
(あれがボス…??
なんか…もっと
魔王みたいな人かと思ってたんだけど…)
心の中でそうつぶやきながらも、
半信半疑の気持ちでチャラ男に近づいていく。
「あ、あの…」
「あれぇ!かわい子ちゃんじゃん!」
見た目の通り、チャラ語で話しかけてくる。
私は少し苦手意識を抱いた。
やはり、私のような奥手にチャラ男はきつい。
「そこのYOU!
イマちゃん…だっけ?
こっち来て俺と遊ぼうぜ!」
「は、はい…」
「自己紹介がまだだったな!
俺は西島勝利!
周りからはボスって呼ばれてんよ〜」
私は少し違和感を感じていた。
西島勝利には一切の圧力を感じない。
羽田千冬も成田千晴も、
あの人たちは態度や身なりで
『THE 圧力』といった存在感を示していた。
確かに、西島勝利も
相当な存在感はあるのだが…
なぜか圧力は感じない。
「どうしたの?ってか、パンツ何色?」
「いえ…なんでも……んん!?」
こんなことを言ってきても、
圧力は感じないから不思議である。
言動にちょっと難ありだけど…。
しかし、違和感は分かるもの。
私はこの圧力が無さすぎる理由にピンときた。
「話し方…?
羽田さんは特に…。
圧力を感じた理由は
声を張って早口で話すから…」
「よく気付いたねぇ、
君天才なんじゃない?
あと、羽田には俺の話し方真似しなって
言ってるから練習が足りなかっただけだろうね」
よく考えると、
西島勝利は丸く落ち着いて
ゆっくりと話している。
「安心させる話し方があるのね…」
と感心していると、
西島勝利に手を掴まれる。
「いーから。
一緒に踊ろうぜ!
今夜はパーティナイトだ!」
そこからの30分、私は踊り続けた。
首が痛い。腰が痛い。暴れすぎた。
でも、男性と一緒に暴れる経験なんて、
今までになかった。
不思議と達成感があり、
気づいた頃には彼に心を開いていた。
「イェーイ!最高だったぜ!」
西島勝利が満面の笑顔で
ハイタッチを求めてきた。
「イェーイ!」
私もノリノリである。
…しかし、
西島勝利の手には
『YES』の文字が書かれていた。
「この表示…どこかで…」
そう思い、周りを見渡す。
予想通り
『コウリャクハジメマスカ』の文字が
彼の頭上に表示されている。
ちなみに『NO』の文字は、
彼が踏みつけていた。
見つかるわけがない。
「ありがと、じゃあボス戦の時間だよ」
私は悟った。
「ハメられた…」
