Diary 写メ日記の詳細
「ハメられた…」
ハイタッチからの強制攻略開始。
『ボス』だと思えば、
このめちゃくちゃ感も納得がいく。
目を離している隙に、
西島勝利の髪色も服装も空間も…
目に映る全てが変わっていく。
なんだか酔ってきてしまったので、
私はそっと目を閉じた。
「寝てるの…?」
私はその一言で目を開ける。
目の前にはまるで別人が立っている。
金髪のチャラ男の面影は薄れ、
少し派手さは残っているのに、
どこか落ち着いた不思議な魅力…
理解するのに時間がかかってしまっている。
「あなたは…西島勝利さん…?」
「そうだよ、別人に見える?」
「いや、なんというか…ハイ…」
「それもそうだよね!ごめんね!
俺の能力は『全知全能の魅力』
理解しようとすればするほど、
魅了されちゃうから気をつけてね」
(理解しようとすると魅了される…?)
全く意味がわからないが、
何も考えないことが一番だと悟った。
「イマちゃん、可愛いね」
彼が話しかけてくる。
『可愛い』という単語は
ここまで来るのに飽きるほど聞いている。
だから、そんなに効果はない…はずなのだが。
「イマちゃんの爪、すごく綺麗」
「唇、ツヤがすごいね、チューしたい」
「髪、サラサラだね。キューティクルやば!」
怒涛の褒めラッシュである。
リップサービス…だと思いたいが、
私が日頃、力を入れてケアしている
部分ばかり褒めるので、
つい本気で受け取ってしまう。
「なんで分かったんですか?
私が力を入れてケアしてる部分…
見ても分からないはずですよ…?」
「分かるよ、俺ならね」
ますますこの男性に興味が湧いてしまう。
なぜ、私の褒められたい部分を
軽々と当ててくるのか。
そして、まるで
私のことを以前から知っているような安心感…
知りたい。この人のことがすごく気になる…!
「もしかして、
俺がイマちゃんの褒められたい部分を
軽々しく当ててくるから、気になってる?」
心まで当てられる始末である。
これで脳内がどうなっているか
気にならないわけがないだろう。
「あの…なんでそんなに分かるんですか?」
「そりゃ、簡単な話だよ。
俺は女性が大好きだからね。
もちろん、イマチャンのこともね?」
『ドキッ』
心臓がなる。
やはり、一方的なコミュニケーションよりも
私のことを知ってくれてることが一番嬉しい。
身体は嘘をつけないようだ。
「私も…あなたが…」
目の前が暗くなっていく。
思えば、
彼の思考を『理解しよう』としてしまっていた。
結局分からなかったけど。
そんなことを考えているうちに
意識が途切れた。
『ザンキ : ゼロ』
