Diary 写メ日記の詳細
階段を登りきった場所で、
私はついに人影を見た。
「やぁ、はじめまーしてっ……」
「誰っ!?」
そこにいたのは、
身長177cmくらいの、パーカー姿の青年。
まだスーツも着ておらず、
大学生か、新社会人といった雰囲気だ。
「なんだ、このヘラヘラ男。
もっと魔王みたいなのが出てくるかと思ってたのに」
「おぉ、いきなり毒舌はヤバだね~
俺たち、初対面なんやけどなぁ…
傷ついて、お涙がちょちょぎれそうだぜ~」
「あぁ、ごめんね。
で、アナタは誰なの?」
「あれ、興味津々じゃんw
俺のこと好きなの?困っちゃうなぁ…」
「そんな君の大好きな男。羽田千冬!
君をデレさせるために、この世界にいるんだ~。
俺、任された仕事は120%でこなしますんで、対戦よろ~」
暴力的コミュニケーション。
ただ、きちんと私の問いには答えているため
コミュニケーションを図ろうとしているのは分かる。
でも、やり方が乱雑…
私はもっと誠実な人がタイプなんだけど…
不器用な体育会系タイプって感じだろうな。
そーゆータイプこそ
焦った時に本質が出る。
(ちょっと揺さぶってみるか…)
「ふーん。
で、どうやって私をデレさせるの?」
私が挑発的に問いかけると、
羽田は焦ったように話し始めた。
「え、えーっと…まずは、
君の悩みを聞いて、俺の根性で解決するかなぁ。
何でも言ってよ、俺が全力で力になるから!」
「あまりにもストレートだね…」
「直球が一番じゃね?」
そこからの時間は、
彼の一方的な熱弁だった。
自分の仕事への情熱、
人を楽しませることへの意気込み、
そして「熱意と根性があれば何でも叶う」という持論を、
延々と語り続ける。
「どぉ?俺、かっけぇっしょ!」
「いや、別に」
彼の「熱量」自体は、
私と似ているから、確かに共感できる。
しかし、その熱意はすべて彼自身に向いている。
(熱いのはいいけど、私の話は聞いてない。
自分の情熱を押しつけてくるだけじゃん)
私は次第に退屈し、苛立ちを覚えた。
攻略が全く進まない状況に、
羽田が痺れを切らしたようだ
焦りの表情を浮かべる。
「あ、あの……!
どうしたらデレてくれるんすか!?
俺、全力で頑張ってるんですけど…!」
私は、とうとう耐えきれず、
核心を突くように問い返した。
「あんた、女性の心を知らないでしょ?
その熱意は認めるけど、あまりにも自分本位。
私には刺さらないな~。」
彼は、その言葉にハッと目を見開いた。
「なるほど…使い方を間違えてたってことか…
でも、どうすれば…」
「簡単だよ。今のままじゃダメ。
まずは、私の話を聞いてごらん。
何がしたいか、じゃなくて、
私に何をしてあげたいか、考えてみな」
彼の目つきが変わる。
反発するどころか、
真剣な顔で私に耳を傾け始めた。
「シブちゃん…説得力あるね
色々教えてよ」
『ドキっ』
なぜか、胸がドキッとした。
良く分からないが、なんだかこの男性が
可愛く見えてくる。
「あんた、ヘラヘラしてて、
暴力的コミュニケーションをとってくるくせに
やけに素直なんだね」
確実にデレてはいない。
これは自分で分かるのだけど…
私が面倒見てあげないとって思ってしまう。
この気持ちは何だろう…。
