Diary 写メ日記の詳細
歌舞伎町タワーの次の階層。
私が足を踏み入れた部屋は、
シンプルで清潔感のある空間だった。
背が高く、真面目そうな青年が、
ソファに座りながら、
膝の上の猫を撫でている。
「やぁ、いらっしゃい
僕は成田千晴。よろしくね~」
青年は穏やかな笑顔で挨拶した。
私は警戒しつつも、猫に目を奪われた。
「その猫は…?」
「この子、名前はシブって言うんだよ。
君と同じ名前でびっくりしてる」
「メス…?」
「メス。」
まさかの猫と同姓同名。
私は驚きを隠せない。
彼は猫のシブを優しく撫でながら、
話しかけている。
「お客さん来ちゃったから、
ブラッシングして
ちょっと席外してもらえるかな?」
彼は
膝の上からネコを下ろし、
棚から何かを取り出した。
「ニャア~」
彼はブラシを取ってくると、
愛おしそうに猫のシブを抱き上げ、
ブラッシングを始める。
私は、そのブラシに何か違和感を感じた。
「そのブラシって…?」
成田は嬉しそうに答える。
「この子、
ブラッシングすると喜ぶんだよ。
毛並みが本当に綺麗になるんだ」
「え、いや、そういうことじゃなくて…」
「どうしたの?」
彼は猫をブラッシングしながら、
首を傾げてシブを不思議な顔で見つめる。
その瞳は、
純粋に猫の幸福だけを
願っているように見えた。
私は意を決して、彼に忠告する。
「あのさ、そのブラシ。
人間用じゃないの…?」
彼はブラッシングの手を止め、
大きな瞳をさらに見開いた。
「猫用に決まってんじゃん~w
シブちゃん可愛いね~!」
彼は猫のシブを抱きしめ、
おどけたように笑った。
「じゃあ、そのR〇faの文字は何?
そのブランドで猫用品見たことないんだけど」
彼は自分の手元のブラシと、
棚に置かれたもう一つのブラシを交互に見つめ、
だんだんと顔が青ざめていく。
「そんなの使うわけないじゃん…って、え?」
彼の顔から、徐々に血の気が引いていく。
私は、この状況で初めて笑ってしまった。
「あんたってもしかして…天然くん?」
