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Diary 写メ日記の詳細

第十話:天然記念物
羽田千冬 2025.11.20
第十話:天然記念物

歌舞伎町タワーの次の階層。

私が足を踏み入れた部屋は、


シンプルで清潔感のある空間だった。

背が高く、真面目そうな青年が、


ソファに座りながら、


膝の上の猫を撫でている。

「やぁ、いらっしゃい


僕は成田千晴。よろしくね~」

青年は穏やかな笑顔で挨拶した。

私は警戒しつつも、猫に目を奪われた。

「その猫は…?」

「この子、名前はシブって言うんだよ。


君と同じ名前でびっくりしてる」

「メス…?」

「メス。」

まさかの猫と同姓同名。


私は驚きを隠せない。

彼は猫のシブを優しく撫でながら、


話しかけている。

「お客さん来ちゃったから、


ブラッシングして


ちょっと席外してもらえるかな?」

彼は


膝の上からネコを下ろし、


棚から何かを取り出した。

「ニャア~」

彼はブラシを取ってくると、


愛おしそうに猫のシブを抱き上げ、


ブラッシングを始める。

私は、そのブラシに何か違和感を感じた。

「そのブラシって…?」

成田は嬉しそうに答える。

「この子、


ブラッシングすると喜ぶんだよ。


毛並みが本当に綺麗になるんだ」

「え、いや、そういうことじゃなくて…」

「どうしたの?」

彼は猫をブラッシングしながら、


首を傾げてシブを不思議な顔で見つめる。

その瞳は、


純粋に猫の幸福だけを


願っているように見えた。

私は意を決して、彼に忠告する。

「あのさ、そのブラシ。


人間用じゃないの…?」

彼はブラッシングの手を止め、


大きな瞳をさらに見開いた。

「猫用に決まってんじゃん~w


シブちゃん可愛いね~!」

彼は猫のシブを抱きしめ、


おどけたように笑った。

「じゃあ、そのR〇faの文字は何?


そのブランドで猫用品見たことないんだけど」

彼は自分の手元のブラシと、


棚に置かれたもう一つのブラシを交互に見つめ、


だんだんと顔が青ざめていく。

「そんなの使うわけないじゃん…って、え?」

彼の顔から、徐々に血の気が引いていく。

私は、この状況で初めて笑ってしまった。

「あんたってもしかして…天然くん?」

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