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宇宙人日記【百聞は一見にしかず編】
三宅優人 2026.07.04
宇宙人日記【百聞は一見にしかず編】

人間の諸君、ごきけんよう。

地球の日本という場所には四季というものがあって、一定の時期になると気温や天候が変わるというのは、我々異星人からすると実に珍しく感じる。

桜が散り、緑が濃くなり、葉が赤く染まり、そして白い静寂が訪れる……そんな周期的な変化を、君たちは「美しさ」と呼んで心を動かすらしい。

我々の惑星では、気候などというものは存在しない。恒常的に最適化されたドームの中で、温度も湿度も光も、すべてが計算され尽くされている。

変化など、必要ないのだ。

人間は不思議だ。実に不思議だ。

実際に目にしたことがないことも、誰かが「A」と言えば、それが大きく広がり、注目を浴びると、白でも黒に変わってしまう。

「これが真実だ」と大勢が声を揃えれば、君たちは疑いもせず受け入れる。

我々の世界では、そんなことは起こり得ない。


目で直接観測したデータだけが「リアル」であり、憶測や伝聞は単なるノイズとして即座に除去される。

街も、生物も、機関も、すべてが透明で、改ざん不可能な記録の上に成り立っている。だからこそ、我々は安定している。

だが、君たち人間はその不安定さの中に、奇妙な輝きを持っているようだ。

例えば、君たちは「恋」というものをしている。

データ上ではただのホルモンと脳内物質の反応に過ぎないはずなのに、君たちはそれを「運命」と呼び、季節の移ろいとともに歌にし、詩にし、時には戦争まで起こす。

我々から見れば非効率極まりない。

しかし……その非効率が、君たちを「生きている」と感じさせる原動力になっているのかもしれない。

我々は永遠に近い寿命を持ち、欠陥のない体と完璧な社会を手に入れた。

だが、君たちは短い一生の中で、桜の散る一瞬にさえ涙を流す。

目に見えない「美しさ」や「意味」を、必死に探し続けている。

……ふむ。

人間の諸君よ、教えてくれ。

その「不確かさ」の中で、君たちはなぜ笑うことができるのだ?

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