Diary 写メ日記の詳細

第十四話:デレるのも余裕が必要なのね
羽田千冬 2026.08.31
第十四話:デレるのも余裕が必要なのね

「ツインズ、行きます!」

宣言とともに、


羽田千冬がズカズカと


私に向かって距離を詰めてくる。

そして、至近距離で


まっすぐに視線を合わせてきた。

「3秒間で良い…俺の目を見て」

「3…2…1…」

カウントダウンがゼロになった瞬間、


羽田は満面のドヤ顔と指パッチンで言い放った。

「俺に惚れたっ⭐︎⭐︎⭐︎」

あまりの急な奇行に、


脳の処理速度が完全に追いつかない。

「え、何…?」

ポカンとする私の隙を逃さず、


今度は背後から成田千晴の大きな身体が


優しく包み込んできた。

耳元に触れる吐息とともに、


少し高めの甘い声が落ちてくる。

「何、千冬のこと見つめてんの。


今は俺だけ見ててよ」

羽田千冬に視線を釘付けにされたかと思えば、


即座に成田千晴へと意識を奪われる。

息つく暇もなく連鎖する


ツインズの波状攻撃に、


受け流す余裕なんてこれっぽっちもない。

「なんか…めまいが。」

目まぐるしすぎる状況の連続に、


私は完全に酔ってしまっていた。


ただ、クラクラする頭の中でも


これだけはハッキリと分かる。

一度リセットされただけなのに、


確実に難易度が跳ね上がっている。


…というか、なんか二人とも


前とキャラ変わってない…?

これがまだ序盤の第一・第二階層なんて、


この先どうなるのか恐ろしすぎる。

そんな思考を巡らせている間も、


二人からの猛攻は一切止まらない。

右から甘い声で囁かれたかと思えば、


左からふいにビクッとするような際どい場所へ


指先を滑らされたり…。

もはや思考回路はショート寸前で、


「ヤバい」という単語しか頭に浮かばない。

その時、


無機質な終了のチャイムが部屋に鳴り響く。

「いつのまに…?」

体感では数分だったはずなのに、


完全に時間が溶けていた。


それほどの圧倒的な充実感と密度の濃さだった。

なのに。


なぜかデレずに耐え切ってしまっていた。

「うわっ!悔しい!!」


「もう一回やらせてよ!!」

目の前で頭を抱えて床に崩れ落ち、


本気で悔しがる羽田千冬と成田千晴。

地団駄を踏みながら


嘆く二人の姿を呆然と見下ろしながら、


私はふと、ある真理を悟った。

「…そうか。


キュンとしたり、デレたりするのって、


心にそれなりの余裕が必要なのね」

怒涛の情報量とツッコミどころの多さに


脳のキャパシティが限界を迎え、


ドキドキする余裕すら奪われていたのが、


結果的に功を奏したらしい。

「ふふっ。じゃあね、二人とも。


すっごく楽しかったよ!!」

まだ悔しがっているツインズに


軽快に手を振って別れを告げると、


勝ち誇った足取りで、


次の階層へと進むのであった。

Commentコメント

Web予約はこちら