Diary 写メ日記の詳細

東京の大都心。
道行く人をビルから眺めながら、私は今日も仕事に明け暮れる。
仕事は好きだ。
でも、ふと気づけば、私の日常はモノトーンに塗りつぶされてしまっていた。
「はぁ…今日もまた残業か…私、こんなの望んでたんだっけ…」
「つまんなくなってきたな…」
カチカチとキーボードを叩く音だけが、静まり返ったオフィスに響く。
窓の外は、すでに漆黒の闇。
時刻は、もうすぐ20時。
終電を気にしながら作業を進めていると、見慣れないメールが届いた。
件名:『今夜、20時新宿で』
差出人不明。いかにも怪しい。絶対に詐欺だ。
そう思ってすぐに削除しようとしたその時、
指が滑って、うっかりメールを開いてしまった。
『プチュンっ…』
次の瞬間、音を立てて画面は真っ暗に。
そして、それに呼応するかのように、オフィスの照明もフッと消えた。
「えっ…何!?」
真っ暗な空間に、私だけが取り残される。
恐怖で動けずにいると、パソコンの画面がかすかに光り、再起動の音が聞こえた。
そして、闇の中に白い文字だけが浮かび上がる。
『イマ様、ようこそお越しくださいました。
ここは現実の世界ではありません。
ここはあなたが望むことが叶う仮想空間でございます』
私の指が震える。
誰かのイタズラ?
それとも、悪質なウイルス?
「…なに、これ」
不審に思いながらも、画面は続けて文字を表示する。
そこには、見慣れた新宿駅の待ち合わせ場所が示されていた。
『カブキチョウへムカイマスカ?』『YES』『NO』
『ご案内は、すでに始まっております。さあ、あなただけの物語を始めましょう。』
ビルから外を見落とすと、人込みだった交差点には人の気配さえなくなっていた。
「私…本当に…別世界に来てしまったの…?」