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Diary 写メ日記の詳細

第三十話:この世界が出来たのは
羽田千冬 2025.10.24
第三十話:この世界が出来たのは

(私は人間に戻れるのでしょうか?)

「その解答は、


この世界が出来た経緯から話していこう。


長い話になるけど、


質問にもちゃんと答えるから安心してね」

そう言うと、


西島勝利は目の前に腰掛け始める。

相も変わらず


私は眠ったまま夢を見ている感覚だが、


そのまま聞くことにした。

「最近は女性の社会進出も進んできて、


良い世の中になったよね」

(そうですね…?)

「にも関わらず、


世間的には性に対して男性の方が


まだまだオープン気味だと俺は思うけど、


イマちゃんはどうかな?」

(確かに…


男性と触れ合いたいと思う


欲はあるのですが、なかなか…)

「そうそう、そうなんだよ。


食欲・睡眠欲・性欲っていう3大欲求。


生きるためのエネルギーであるにも関わらず、


現実社会では女性はまだまだ性欲に対して


前向きになれていない気がするんだ」

言っていることは至極真っ当である。

確かに私は、仕事ばかりしていた。


次の日の仕事に支障が出ないように、


最低限の食事、睡眠は取っていた。

気づけば娯楽など一切なく、


もちろん男性との関わりなんてもっての他。


仕事人間になっていたことに私は気づく。

(仕事に追われて…


私、人間に必要なエネルギーの一つを


疎かにしていたってこと?)

「そういうこと。


『無くても生きていける』


なんて言われるから、皮肉だよね」

「俺はそんな現実社会の女性に


性の喜びを知ってもらうために、


この世界を作ったんだ」

(言われてみれば確かに。


実際、私はこの世界に来るまで


退屈を感じていたし。


『性』って大事なんですね)

「生と性ってことだよ」

(……?)

いきなり


何を言い出したのか分からなくなったが、


全体的には彼の話に同意していた。

(人間に戻ったら


ちゃんと頑張ろうかな…)

「何言ってるの?人間には戻れないよ?」

(え…?)

「大体、この時点でみんな


人間に戻っ『たら』っていうんだよ。


所謂タラレバってやつね。


だから、残機ゼロになった人間は


欲望に忠実に生きてもらうようにしてるんだ。


現実世界には戻れるから安心してね」

(じゃあ…もう二度と


人間には戻れないってこと…?)

「そういうことだね」

(そんな…一方的にすぎませんか…!?)

「じゃあね」

(ちょっと待って!)

彼が手を振っているのを確認したのを最後に、


私の意識はプツンと切れた。

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