MENU
               

Diary 写メ日記の詳細

第九話:慣れてんのよ
羽田千冬 2025.11.19
第九話:慣れてんのよ

歌舞伎町タワーの第一階層。


私は羽田千冬にリベンジすべく、


階段を上っていた。

「さっきぶり~、ぎゅーには弱かったんだね」

「うるさい」

羽田千冬は、前回とは打って変わって、


黒のスーツに身を包んでいた。


まだ着慣れないのか、少しだけ窮屈そうだ。

「なんでいきなりスーツなの?」

「教えてくれたことを全部反映して、


執事Styleを身に着けるためだよ」

「ふぅん…そうなんだ」

私は、今度こそ絶対に


油断しないと意気込む。

しかし、


デレないようにと彼のアラ捜しに


集中力を注ぐあまり、


何を話せばいいのか分からなくなってしまった。

「……」

すると、


彼は困ったように


眉を下げて私に指摘する。

「あれ、なんでしゃべらなくなったの?」

「ちっ…」

私は器用な方ではない。


考えながら話すことができず、


出鼻をくじかれてしまった。

「では、気を取り直して…


…お嬢、こちらに」

私は言われるがままに椅子に座る。

まだまだぎこちないが、


私に至れり尽くせりしようと


してくれているのはわかる。

「成長したじゃない、


少しは付き合ってあげるわよ」

「ありがたきお言葉」

「口調まで変わっちゃうのねw」

私は笑いながらも、彼の奉仕を受け入れた。

紅茶を淹れ、肩を揉み、


私に話す隙を与えない尽くし。

未熟だった前回とは違い、


彼の行動は私の言葉が強く影響している。

しかし、


私の心情にはなんの変化もなかった。

むしろ、


心地よすぎて、


いつの間にか時間が過ぎていく。

気づけば、120分が経過していた。

彼は満足げな表情を浮かべている。

この時点で、


彼の頭の中では


デレ成功のイメージが湧いていたのだろう。

「…あのさ、


言いにくいんだけど、一つ良いかな?」

私は、彼が次の行動に移る前に、


静かに切り出した。

「何なりと。何か不満がございましたか?」

「私って、女王様気質持ってんのよ」

「……はい?」

彼は完全に動きが止まった。

「つまり、尽くされるの慣れてんの。


現実でもだいぶ尽くされる側だったから、


尽くされることにはデレないんだよね」

「………」

彼は、その場に立ち尽くし、


そのまま黙りこんでしまった。

そして、絞り出すように一言。

「そういうのは先に言お!?」

「キャハハ!


でも、頑張ったじゃん!えらい!」

私はつい面白くて笑ってしまったが、


楽しい時間を過ごすことが出来たのは本当だった。

その時、150分が経過し、


終了のベルが鳴り響く。

「あぁ…俺の執事Styleは


これから通用するかな…?」

羽田はショックから


立ち直れない様子で尋ねてきた。

「大丈夫だよ。私が割と特殊なだけ。


他の人には使えると思うよ。自信持って」

「楽しかった!ありがとう!」

私はにっこり手を振って、


次の階層へ向かうのだった。

Commentコメント

LEAVE

18歳未満の方

当サイトにはアダルトコンテンツが含まれております。
18歳未満の方のご入場は固くお断りしていますので
LEAVEから退場して下さい。

Web予約はこちら