Diary 写メ日記の詳細

私はPC画面に浮かび上がった文字を
呆然と見つめていた。
『カブキチョウへムカイマスカ?』
『YES』『NO』
人影が消えた交差点。
目の前の出来事は、
あまりにも現実離れしていて、
信じがたかった。
でも、同時に、
退屈な私の日常に、
一筋の光が差し込んだような気がした。
「行くしかないよね…」
震える指で『YES』をタップする。
画面が再び光り、地図アプリが表示される。
目的地は、歌舞伎町一番街の門。
オフィスを出て、誰もいない夜の道を歩く。
街の喧騒はどこへ行ったのだろう。
静まり返った道路は、
まるで映画のセットのようだった。
新宿駅に着く。
そこもまた、人の気配がなかった。
普段は人で溢れかえる改札も閑散としている。
「やっぱり…別世界なのね…」
そして、数分歩き、
地図アプリの示す場所へとたどり着いた。
歌舞伎町一番街の、巨大な門。
煌びやかなネオンが、闇夜に燦然と輝いている。
その門の前に、人影があった。
「…え?」
思わず声を上げそうになった時、
その人物がこちらを振り返った。
私より少し歳下にみえる
派手な服装の女性。
少し明るい茶色の髪が、
ネオンの光を受けてキラキラと光っている。
警戒するように、
こちらを睨みつけるような目が印象的だった。
「…あんた、初めて?」
女性が、ぶっきらぼうに尋ねてくる。
私はただ、呆然と頷くことしかできなかった。
それが、「シブ」との初めての出会いだった。
「ふーん。私、シブ。あんたは?」
「イ、イマです」
「ふーん。イマね。
どうせなら、もう少し早く来てくれれば、
無駄な苦労しなくて済んだのにね」
シブはそう言って、ため息をついた。
どういうことだろう?無駄な苦労?
「シブさんも、あのメールで?」
「そ。少し前にここに来たんだけどさ、
色々大変だったんだからね。
ま、あんたは運が良いよ。
私がここにいてあげたんだから」
そう言うシブの言葉に、私は戸惑いを隠せない。
混乱している私に、
シブは腕を組み、ニヤリと笑った。
「…教えてあげるよ。この世界のルールをね」