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第八話:まだまだ荒削り
羽田千冬 2025.11.18
第八話:まだまだ荒削り

歌舞伎町一番街の門前。


私は、荒い呼吸と共に目を覚ました。

「ここは?戻ってきちゃった…?」

身体に力を入れようとするが、


全身がだるい。

最後の記憶は、


羽田千冬のニヤけ顔と、突然の抱擁。

(敗因は…


抱き着かれたことによる『デレ』?)

あまり男性経験がない私にとって、


母親に甘えるような羽田の抱擁は、不意打ちだった。


慣れないことが突然起きたせいでびっくりし、


一気に気が緩んでしまった。

あの抱擁が、デレと判定されたのだ。

「あのヤロウ…」

悔しさで歯を食いしばると、


突然スマホが光る。

『ザンキ:ノコリ3カイ』

「え…嘘でしょ。


残機なんて設定あんの…?


これ、無くなったらどうなんの!?」

夢かと思い、頬をつねる。

「いたっ…」

このタワーが、


本当に人生をかけた有限のゲームだと、


今初めて実感した。

……

歌舞伎町タワーの最上階。


夜景を見下ろす展望フロアで、


西島勝利は一人、モニターを覗き込んでいた。

画面には、


門前で立ち尽くすシブの姿が映っている。

「やはり、明確なゴールがないと、


お客様もメンズも疲弊するだけだ。


それに、デレの判定が曖昧すぎる」

西島は自立式AIに指示を出す。

「タワーのルールを変更する」

「これからは、


150分間メンズの誘惑に耐えきれば攻略完了とする。


これを、お客様に伝えてくれ」

その瞬間、


門前にいる私の脳内に直接、AIの声が響いた。

(シブ様、タワーのルールが更新されました)

(攻略のルールは、


150分間、各階のメンズの誘惑に


耐えきることでございます。


デレなければ、クリアとなります)

「150分…何が基準になってるんだろう…」

明確なゴールができたことに、私は安堵した。


これで、ただ延々と誘惑に晒されることはなくなった。

私は、羽田戦での敗北を思い返す。

敗因は、羽田の成長による油断。


最初はたどたどしかったが、


人の意見をしっかり聞いて


素直に実行する真っすぐな姿勢。

これにはさすがに


「母性」が働いてしまった。

それがあったから、


さっき油断してしまったのだろう。

(だが、今はそんなことどうでもいい。


新たなルールができた。


このルールの中でなら、私は負けない)

「負けない…はず…。」

私は、再び立ち上がった。

「馬鹿みたいに抱き着かれて、


純粋な感情で負けるなんて、もう二度とゴメンよ!」

「待ってな、羽田!


今度こそ、あんたの魅力を、


新たなルールの中でねじ伏せてやるんだから!」

私は強い決意を胸に、


歌舞伎町タワーの自動ドアへ向かって歩き出した。

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