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Diary 写メ日記の詳細

第十話:サクライミドリ
羽田千冬 2025.09.27
第十話:サクライミドリ

「ありがとう、大好きだよ♡」

その言葉とともに、


トイ・ミドーリーの姿がガラリと変わる。

おもちゃだった身体は、


あっという間に端正な男性へと変化した。

「人間に…なった…?」

私は、その変貌ぶりに息をのんだ。

「僕は櫻井翠。


開放してくれてありがとう!


今から僕が君を守るよ」

ミドリは優しく微笑みながら、私の手を取る。


その「守る」という言葉は、私の心の奥底に響いた。

「守る…か…」

その言葉を聞いた瞬間


私の意識は過去の記憶を思い出していた。

子供の頃から、ずっと目立たず、静かに生きてきた。


ひそかにモテてはいたけれど、


自分から告白したことはない。

告白されたこともあったけれど、


男性が怖くて、すべて断ってきた。


そして、気づけば『彼氏なし=年齢』を貫いていた。

羽田千冬の『執事Style』も、


成田千晴の『真摯な学び』も、


あくまで非日常の空間で、一定の距離感があった。

だから、


私はデレることなく、


なんとか耐えることができた。

しかし、今回のミドリは違う。


日常感あふれる圧倒的な彼氏感で、


私を包み込もうとしている。

それも、「守る」だなんて言われてしまった。


そんなのすべての女の子の理想だろう。

「ぼーっとしてるけど、どうしたの??」

ミドリの声が、私を現実に引き戻す。

「えへへ…守るなんて言ってくれて嬉しい♡」

私は、思わず微笑んでしまった。


彼の優しい声に、もう耐えることができなかった。

その瞬間、


私の視界が暗くなっていき、


身体が脱力していく感覚に襲われる。

「ヤバ…デレちゃっ…た…。」

沈黙が、私とミドリを包み込む。

……

次に目が覚めた時、


私の目の前に広がっていたのは、


見覚えのある光景だった。

煌びやかなネオンを放つ、


歌舞伎町一番街の門。

「戻ってきちゃったか…」

私は、無力感に打ちひしがれ、その場にへたり込んだ。

『ザンキ:ノコリ3カイ』

そんな表示に全く気づかないまま…

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