Diary 写メ日記の詳細

「ありがとう、大好きだよ♡」
その言葉とともに、
トイ・ミドーリーの姿がガラリと変わる。
おもちゃだった身体は、
あっという間に端正な男性へと変化した。
「人間に…なった…?」
私は、その変貌ぶりに息をのんだ。
「僕は櫻井翠。
開放してくれてありがとう!
今から僕が君を守るよ」
ミドリは優しく微笑みながら、私の手を取る。
その「守る」という言葉は、私の心の奥底に響いた。
「守る…か…」
その言葉を聞いた瞬間
私の意識は過去の記憶を思い出していた。
子供の頃から、ずっと目立たず、静かに生きてきた。
ひそかにモテてはいたけれど、
自分から告白したことはない。
告白されたこともあったけれど、
男性が怖くて、すべて断ってきた。
そして、気づけば『彼氏なし=年齢』を貫いていた。
羽田千冬の『執事Style』も、
成田千晴の『真摯な学び』も、
あくまで非日常の空間で、一定の距離感があった。
だから、
私はデレることなく、
なんとか耐えることができた。
しかし、今回のミドリは違う。
日常感あふれる圧倒的な彼氏感で、
私を包み込もうとしている。
それも、「守る」だなんて言われてしまった。
そんなのすべての女の子の理想だろう。
「ぼーっとしてるけど、どうしたの??」
ミドリの声が、私を現実に引き戻す。
「えへへ…守るなんて言ってくれて嬉しい♡」
私は、思わず微笑んでしまった。
彼の優しい声に、もう耐えることができなかった。
その瞬間、
私の視界が暗くなっていき、
身体が脱力していく感覚に襲われる。
「ヤバ…デレちゃっ…た…。」
沈黙が、私とミドリを包み込む。
……
次に目が覚めた時、
私の目の前に広がっていたのは、
見覚えのある光景だった。
煌びやかなネオンを放つ、
歌舞伎町一番街の門。
「戻ってきちゃったか…」
私は、無力感に打ちひしがれ、その場にへたり込んだ。
『ザンキ:ノコリ3カイ』
そんな表示に全く気づかないまま…