Diary 写メ日記の詳細
舞台は変わり、新宿三丁目。
古い雑居ビルの地下に、ひっそりと佇むバー。
店内はジャズが控えめに流れ、
薄暗い照明がカウンターを照らしている。
私は、そこで一人、
グラスを傾けていた。
「はぁ…退屈だなぁ……」
カクテルグラスに残った鮮やかなブルーが、
私の内側にある、退屈を映し出しているようだった。
「マスター、濃いの頂戴」
「シブちゃん…やけ酒は良くないよ?」
「今日は良いのよ」
「また、就活失敗だよ?
私のこと『面白い子だね』って言ってくれたのに、
結局『君はうちの社風に合わない』だってさ」
「意味わかんなくないっ!?」
グラスをキュッと掴む。
どうして、こんなにも世間はつまらないのだろう。
波風立てず、空気を読んで、
まるで、個性を出すなって言われている気がする。
「こんな時、
彼氏の一人でもいたら、
何か変わったのかなぁ…」
「シブちゃん…?」
「あーあ、誰か私を受け止めて、
私を最高に刺激してくれる場所、
つれてってくれないかな?」
マスターに構ってもらおうと
小言を言っていた。
その瞬間だった。
ピコン!
スマホの画面が、
静かな店内で異質な光を放つ。
件名:『今夜、20時新宿で』
差出人は不明。
本文は、地図アプリのリンクと、たった一言。
『イマ、シゲキヲモトメマシタネ?』
「ぷっ。なにこれ。
いかにも怪しい誘い文句!
スパムかよ、うけるじゃんwww」
そう笑いながら、
シブの指は勝手に画面に触れていた。
画面が切り替わる。
『ヨウコソ』
「あれ、私、押しちゃってた!?」
急に身体の力が抜ける。とても眠たい。
マスターが私の名前を呼んでいるのが聞こえる。
あぁ…そうか…私は…
