Diary 写メ日記の詳細

シブに手を引かれ、
煌びやかなネオンをくぐり抜ける。
歌舞伎町タワーは、
近くで見ると一層その威容を誇っていた。
「ここから…」
ごくりと唾を飲み込む。
緊張で心臓がドクドクと鳴っていた。
隣のシブは、そんな私を気にも留めず、
タワーの自動ドアへと向かう。
「最初はアタシが一緒だから、安心しな」
……
「…って、あれ?」
自動ドアはピクリともしない。
シブが何度か手で押してみるが、
やはり開かない。
「この前までは開いてたのに…」
その時、私たちの脳内に
直接声が響いた。
「残念です。ここから先は1人用。
2人で来られる場合は
強制リセットでございます。
またのお越しをお待ちしております。」
どこから聞こえてくるのか分からない、
暖かく包み込むような心地の良い声。
しかし、言っていることは無慈悲だ。
シブと顔を見合わせる。
お互いの顔に、困惑の色が
浮かんでいるのが分かった。
「何だか…急に…めまいが…」
目の前が暗くなり、景色が回転する。
やがて、やがて立っていられなくなり、
その場に崩れ落ちた。
……
「んんっ…」
目を覚ますと、
そこは歌舞伎町一番街の門の前だった。
「戻ってきた…?」
すでに目を覚ましていたシブが、
不貞腐れたように地面を蹴っている。
「ちぇっ、まじかよ。二人じゃダメなのか…」
私はシブに先に行くよう促した。
しかし、シブは不貞腐れたまま答える。
「先に行って。私は気分が晴れたら行くから」
シブはそう言うと、タバコに火をつけた。
結局、歌舞伎町タワーへは
私一人で向かうことになった。
再び、煌びやかなネオンをくぐり、
一人でタワーの前に立つ。
「私だけの物語ってことね…」
震える手で自動ドアに触れると、
今度はすんなりと開いた。
「上等よ…やってやるわ。」