Diary 写メ日記の詳細
俺は久しぶりに石川へ帰省した。
実家の玄関を開けた瞬間に「ああ、帰ってきたんだな」と思った。
そして、聞き慣れたあの声が蘇る...
「買い物行ってくるけど、なんか欲しいものある?」
その問いは昔から変わらない家の匂いみたいなものだ。
俺は迷わず言った。
「こんにゃくゼリー」
しばらくして、母が帰ってきた。
買い物袋からそっと取り出されたのはウィダー in ゼリーとゼロカロリー蒟蒻ゼリー。
俺は少しだけ驚いたけどすぐに気づいた...
きっと母はこう考えたんだ。
「蒟蒻ゼリーはお菓子みたいなものだから、体に良くないかもしれない」
「でも、息子が欲しいって言ったから買ってあげたい」
「栄養もちゃんと摂ってほしい」
その全部が心配と優しさの両方だったんだ。
だからこそ、ふたつのゼリーが並んだのだろう。
手に取った瞬間、胸の奥がじんわり熱くなった。
こんな風に心配してくれる人がいること。
普段は忘れてしまいがちだけど、帰ってくるといつも思い出す。
けれど同時にひとつの悩みも生まれた。
どっちを食べれば母は喜んでくれるだろう?
俺が欲しいと言った蒟蒻ゼリーを食べれば、母の健康を思う気持ちを無視することになる。
ウィダーを選べば俺のために考えて、選んで買ってくれた蒟蒻ゼリーを裏切ることになる。
ふたつのゼリーを前に俺はしばらくじっと座っていた。
どれくらい悩んだだろう。
時計の針が一周した事だけは覚えている...
そして結論は一つしかなかった。
どちらの気持ちも無駄にはできない。
気がつくと袋の中のゼリーはいつの間にかどちらもなくなっていた。
ゼロカロリーも悪くない...
俺は強欲だ。
蒟蒻ゼリーみたいな女性でもウィダー in ゼリーみたいな女性でも俺はペロリだぜ。
